カビ処理時の材料水分と水分活性

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カビ処理業者さんやシロアリ駆除業者さんが材料水分計という機械で建材の水分を計っている画像を見たことがある人も多いと思います。含水率計とか材料水分計とか呼ばれますよね。

2本の針が付いていて建材に針を当てると建材の水分が分かる機械が代表的で、針が付いていなくて建材に当てるだけで測れる機械もあります。僕もどちらも持っていますし使っています。

水分活性。この言葉は普段聞きなれない言葉だと思います。僕たちカビを専門としている業者は材料水分よりも水分活性を知らなければしっかりとしたカビ対策は行えませんから非常に重要な概念となります。が、多くのカビ業者さんは水分活性を知らない人が多いんですが(汗)

今年の秋に発表されていた秋田県立大学の長谷川教授らの研究発表でも水分活性の重要性がしっかりとデータとして示されていました。

今回はカビの発生に材料水分、水分活性はどのような関係があるのか?というテーマで書いていこうと思います。

材料水分(含水率)とは、文字通り、ある材料や物体の中に含まれている水分の総量を示す指標です。

1. 定義と単位

材料水分は、その材料の重量に対する水分量の割合で表されます。通常、パーセント(%)で示されます。

測定方法によって、以下の2通りの表し方があります。

① 湿量基準含水率

最も一般的に用いられる方法で、水分量材料全体の総重量で割って算出します。

② 乾量基準含水率

水分の重量を、水分を完全に除去した乾燥固形分(乾物)の重量で割って算出します。木材や建材の分野でよく用いられ、水分が非常に多い材料を扱う際に便利です。

2. 水分の種類と材料水分

材料水分が示す「水分」は、自由水結合水両方を含んだ総量です。

したがって、材料水分が高くても、その大部分が結合水であればカビは生えにくい、ということが起こります。(例:ジャムや蜂蜜)

3. 測定方法

材料水分(含水率)を測定する主な方法は、大きく分けて2種類あります。

A. 乾燥法(最も一般的で正確)

材料を加熱して水分を完全に蒸発させ、その前後の重量差から水分量を求める方法です。

  1. 加熱前重量を測定する。
  2. 材料を所定の温度(例:105°C)で一定時間、または重量が一定になるまで乾燥させる。
  3. 加熱後重量(乾燥固形分重量)を測定する。
  4. 重量減少分を水分量として計算する。

B. 電気抵抗式(迅速測定)

木材やコンクリートなどの建材に電極(針)を刺し、材料の電気抵抗を測定して含水率に換算する方法です。水分の量が多いほど電気を通しやすくなる性質を利用しています。カビ業者さんの多くが建物の結露や漏水チェックカビ発生リスクの評価を行う際に使われるポータブルな水分計は、この原理に基づいています。

1. 自由水と結合水

材料に含まれる水分は、大きく分けて2種類あります。水分活性が示すのは、このうち自由水の割合です。

  • 自由水:食品成分と結合せず、自由に動き回れる水。微生物の生命活動や化学反応(酸化、褐変など)に利用されます。
  • 結合水:タンパク質や糖などの食品成分と強く結合しており、動きが制限されている水。微生物は利用できず、凍結や蒸発もしにくい性質があります。

2. 数値の定義と範囲

水分活性は、特定の温度で材料中の水蒸気圧 と、その温度における純水の水蒸気圧 の比率で定義されます。

純水は自由水が100%のため、Aw = 1.0 です。

  • 完全に乾燥した材料は水がないため、Aw = 0 です。
  • 一般的な材料は 0 < Aw < 1.0 の範囲で示されます。数値が1.0に近いほど、自由水の割合が高く、微生物が増殖しやすい、つまり保存性が低いことを示します。

📌 密閉空間の湿度との関係:

ある材料を密閉容器に入れた際、水蒸気が平衡状態に達した時の相対湿度(%RH)を100で割った値が、その材料の水分活性(Aw)とほぼ等しくなります。

実際の現場で建材を密閉容器に入れることはほぼ無理じゃないかと思います。

材料水分は、カビの生育に間接的に影響します。

  • 水分総量が多いと、自由水も多い傾向: 水分含量が多い材料(生鮮食品、パン、高含水率の建材など)は、微生物が利用できる自由水の割合も高くなる傾向があります。そのため、一般的に水分含量が高いほどカビが生えやすい、という経験則が成り立ちます。
  • 建材における具体的な数値: 木材やコンクリートなどの建材の場合、含有水率が特定のしきい値を超えるとカビの発生リスクが急増することが知られています。例えば、木材では含有水率が15%を超えるとカビが発生しやすくなるとされています。
  • 例外と限界: しかし、材料水分が同じでも、塩や砂糖などの成分が多量に含まれていると、その水分が結合水として固定されてしまうため、カビは増殖できません。つまり、材料水分だけでは、カビの増殖リスクを正確に予測できないという限界があります。

💡 例:

  1. 水分含量が40%の生ハム(塩分が高い)
  2. 水分含量が40%のスポンジケーキ

どちらも水分含量は同じですが、生ハムは水分活性が低くカビが生えにくい一方、スポンジケーキは水分活性が高くカビが生えやすいです。

水分活性は、カビの増殖の直接的な限界値として利用されます。

  • 増殖の限界値: カビは一般的に、Aw 0.80以上で増殖しやすくなります。
    • 多くの微生物は Aw 0.90以上で活発に増殖します(一般的な細菌など)。
    • カビや酵母は、細菌よりも乾燥に耐性があり、より低いAwでも増殖可能です。
  • 耐乾性カビの存在: **耐乾性カビ(乾燥に強いカビ)**と呼ばれる特殊な種類のカビ(アスペルギルス属の一部など)は、Aw 0.60〜0.65程度という非常に低い水分活性でも生育できることが知られています。これは、カビが持つ浸透圧調整能力が高いためです。
  • 安全な保存域: Awを0.60以下に抑えることができれば、耐乾性カビを含むすべての微生物の増殖を完全に阻止できるとされています。

保存性の確保: 一般にAwを0.70以下に抑えることで、ほとんどの微生物の増殖を抑制でき、Awを0.60以下に抑えれば、全ての微生物の増殖を完全に阻止できるとされています。

水分活性を低下させる方法: 昔ながらの保存技術は、すべて水分活性の制御に基づいています。

  • 乾燥: 水分総量を減らし、自由水を減少させる(例:干物、乾物)。
  • 塩漬け・糖蔵: 塩分や糖分を添加し、浸透圧の力で自由水を結合水に変える(例:漬物、ジャム)。

1. カビの生育に利用されるのは「自由水」

材料に含まれる水分には、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 自由水:食品成分と結合せず、自由に動き回れる水。微生物(カビ、細菌、酵母)が利用できる水で、化学反応や微生物の増殖に利用されます。
  • 結合水:食品のタンパク質や糖などの成分と強く結合しており、動きが制限されている水。微生物は利用できません

カビなどの微生物は、水分活性が示す自由水が一定の値以上ある環境でしか増殖できません。水分活性を下げる(自由水を減らす)ことで、総水分量が比較的多くてもカビの増殖を抑制できます。

2. 水分活性の低下がカビ増殖を抑制

多くのカビは、一般的に水分活性が0.80以上で増殖しやすくなります。しかし、一部の耐乾性カビ(乾燥に強いカビ)は0.60程度でも増殖できることがあります。

伝統的な食品保存法である乾燥塩漬け糖蔵(ジャムなど)は、いずれも総水分量を減らすか、または塩や糖の力で自由水を結合水に変えることで水分活性を低下させ、微生物の生育を抑制しています。

微生物の種類生育しやすい水分活性の範囲 (Aw)
カビ(一般的)0.80以上
耐乾性カビ0.60~0.80
細菌(一般)0.90以上
黄色ブドウ球菌0.85以上

水分活性と材料水分のまとめ

項目水分活性 (Aw)材料水分(水分含量)
示すもの微生物が利用できる水(自由水)の量・状態材料に含まれる総水分量
カビ防止への影響直接的な指標。低いほどカビの増殖を抑制できる。間接的な指標。量が多くても、結合水が多ければカビは生えにくい。
単位0~1.0の数値(理論上)

したがって、カビ防止策を講じる際は、水分活性(Aw)を制御することが最も効果的で信頼性の高い方法となります。


カビの抑制方法として、水分活性の調整以外にも温度管理湿度管理、酸素濃度の調整(脱酸素剤の利用など)が重要になります。

ちなみに水分活性の計算方法(理論値)は以下の通りになります。(手書きのメモで読みにくくてすみません)

これはASHRAEが提案した水分活性推定法に基づいてAwを導き出すための式となります。

じっさいに現場において建材の水分活性を機械で測定というのは無理に近いと思います。材料を切り抜いて測定とか、何かしら材料を傷つけなければいけないので。これを理論値にはなりますが計算式で導き出せるのは大きなメリットだと思います。

実際に現場で計算してみると「実際よりもちょっと大きな数字になる?」という感じがしますが、それでも大した誤差ではないと思うので有用な考え方だと思います。

材料水分計で建材の水分量を測定している写真をカビ業者さんはHPに載せがちですが、実際の所はこれでは漠然とした数値しか分からない。ということになると思います。

これだけ解説しましたのでBeクリーンではバッチリしっかり水分活性も測定しています。

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その後のカビリスクを理論的に予測できるのか

カビ処理ってそれなりに高額ですから、どうせ支払うならカビリスクを本当に減らしてくれる業者さんを選ぶのがいいと思います。

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