お掃除の時の濯ぎ どのように中性域に持っていくのか?

目次

例えばpH12のアルカリ洗剤でクローゼットの戸を拭くとします。

スプレーヤーでシュシュっと洗剤を吹き掛けて、濡れタオルで拭きます。その後、乾拭きでしあげます。

これで戸の表面はpH7前後になっているのか?

色々と考えてみます。

この清掃条件でpHが下がる要因として考えられることは

アルカリ成分の物理的な除去:

水拭き乾拭きによって、戸の表面に残っているアルカリ性の洗剤成分の「絶対量」は減少します。これにより、pHは元の12よりも確実に下がります。

空気中の二酸化炭素との反応(中和):

時間の経過とともに、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)がアルカリ成分と反応し、中和が進むことでpHが徐々に低下します。これは炭酸化と呼ばれる現象です。

pHがあまり下がらない可能性、または注意点

  • 完全な除去は困難:
  • 水拭き乾拭きだけでは、洗剤成分を完全に除去することは難しい場合があります。特に、洗剤が乾燥して微細な結晶として残った場合、乾拭きでは取りきれない可能性があります。
  • 残留アルカリ: ある程度のアルカリ成分が表面に残存するため、pHが中性(pH7付近)まで一気に下がることは考えにくいです。
  • 材質への影響: ドアの材質によっては、高いアルカリ性に長時間さらされることで変色や変質のリスクがあります。乾拭きでpHが下がるとはいえ、できるだけ早く中性に近づけることが望ましい場合もあります。

結論として

水拭き乾拭きをすることで、ドア表面のpHはpH12よりも確実に低下します。しかし、どの程度まで下がるかは、以下の要因によって大きく変動するため、具体的な数値を提示することはできません。

  • 最初に塗布した洗剤の量
  • 乾拭きの念入りさ、タオルの種類
  • ドアの材質(多孔質か、平滑かなど)
  • 拭き取り後の残留水分量
  • 経過時間

一般的に、水拭き乾拭きだけでは完全に中性に戻すのは難しいと考えられます。もし、アルカリ性が残ることによる影響(例えば、敏感肌の方が触れる、材質への影響が心配など)を懸念される場合は、洗剤塗布後にブラッシング、清水で濯ぎ、その後水拭き乾拭き。これにより、残留アルカリをより効果的に除去し、pHをさらに中性に近づけることができるのではと考えられます。

洗剤塗布後に水拭き乾拭きで清掃を行い対象物は乾燥した状態になります。

しかし乾燥したからと言って中性域になっているのか?再度濡れた場合は?

アルカリ洗剤の成分がいったん乾いたとしても、再度水分に触れることでアルカリ性の液性は復活します。

理由は以下の通りです。

  • アルカリ成分の残存: 洗剤が乾燥するというのは、主に水分が蒸発することです。アルカリ性を示す化学成分(例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、ケイ酸塩など)そのものが分解したり消滅したりするわけではなく、固体の形で表面に残存しています。
  • 再溶解によるイオンの放出: 残存しているアルカリ成分が再び水に触れると、これらの成分が水に溶け出します(再溶解)。水に溶けることで、アルカリ性を示す原因となる水酸化物イオン (OH⁻) などを再び放出するため、液性はアルカリ性に戻ります。

例えるなら:

食塩を水に溶かしてしょっぱい食塩水を作り、その後、水分を蒸発させて乾燥させると、白い食塩の結晶が残ります。この食塩の結晶に再び水を加えれば、またしょっぱい食塩水になるのと同じようなイメージです。

コンビニなどのセラミックタイルなんかは理論的に破綻している洗浄方法で洗ってしまうと、濡れると滑る。現象が起きてしまいます。これも上記の水酸化物イオンが濡れることで再放出されることも一因であるのです。

濯ぎの前に洗剤が汚れを落とす仕組みと言いますか?ちょっとしたイメージなんですが

洗剤で汚れが落ちるメカニズムは、「溶ける」と「浮き上がって移動する」の両方の作用が関わっています。

汚れの種類や洗剤の成分によって主となる作用は異なりますが、一般的には以下のように説明できます。

  • 浸透・湿潤作用: 洗剤の成分(主に界面活性剤)が、まず汚れとそれが付着している物の表面に浸透し、濡れやすくします。
  • 乳化・分散作用: 油汚れのような水に溶けにくい汚れは、界面活性剤の油になじみやすい部分(親油基)に取り囲まれます。そして、界面活性剤の水になじみやすい部分(親水基)が外側を向くことで、汚れが水中に細かく分散され、浮き上がった状態になります。これは、汚れが水中に「溶け込んだ」ように見えることもあります。
  • 吸着・再付着防止作用: 界面活性剤が汚れの粒子を取り囲むことで、一度剥がれた汚れが再び物の表面に付着するのを防ぎます。

つまり、洗剤は汚れを化学的に分解して完全に「溶かす」というよりは、汚れを細かくして水中に分散させ、浮き上がらせることで、水と一緒に洗い流せるようにする働きが主です。一部、酵素などが配合された洗剤では、タンパク質汚れなどを分解して「溶けやすく」する作用もあります。

このように「汚れを浮き上がらせる」そしてこの浮き上がった汚れを水で濯ぎ移動させる。

これが大切になります。

ここで濯ぎの水分量の話になります。

水には主に以下のような役割があり、汚れを落とすプロセスに不可欠です。

  1. 汚れを物理的に剥がし、運び去る役割:
    • 水流によって、表面に付着している汚れを物理的に剥がし取ります。
    • 浮き上がった汚れや、洗剤によって分解・乳化された汚れを、その場から運び去り、再付着を防ぎます。これが「すすぎ」の基本的な役割です。
  2. 汚れを溶かす・薄める役割:
    • 水溶性の汚れ(例:塩分、糖分など)は、水に溶け込むことで除去されます。
    • 汚れの濃度を薄め、落としやすくする効果もあります。
  3. 洗剤の効果を引き出す役割:
    • 洗剤を使用する場合、洗剤の成分が水に溶けて初めて効果を発揮します。適切な量の水があることで、洗剤が均一に広がり、汚れに作用しやすくなります。

水分量が不適切な場合の影響

  • 水分量が少なすぎる場合:
    • 汚れを十分に運び去ることができず、再付着しやすくなります。
    • 洗剤を使用する場合、洗剤濃度が高くなりすぎて素材を傷めたり、すすぎ残しの原因になったりすることがあります。
    • 摩擦が大きくなり、素材を傷つける可能性があります(例:乾拭きに近い状態での拭き掃除)。
  • 水分量が多すぎる場合:
    • 洗濯などでは、水の量に対して洗剤が薄まりすぎると、洗浄力が低下することがあります。
    • 拭き掃除などでは、水滴が残りやすく、水垢の原因になったり、木材などの水を嫌う素材を傷めたりすることがあります。

このように、洗剤の効果を最大限に引き出し、汚れをきれいに落とすためには、汚れの種類や量、洗う対象の素材、そして使用する洗剤の種類に合わせて、適切な量の水を使うことが非常に重要です。

清掃後対象物を中性域にするには清掃方法や水分量が大切なのはイメージできたかと思います。

ただ、厳密に水だけで中性にするというのはもの凄く難しいです。

例えば

pH12の洗剤10ℓを床に塗布する。

これを水だけでpH7にするには?

結論から言いますと、約999,990リットルの水が必要ということになります。これは25mプールの容量(一般的に数百キロリットル)の数倍に相当する量であり、非現実的な量です。

こんなもの無理に決まっています(汗)

計算式は

初期の水酸化物イオン濃度 [OH−]1​ を計算する

元のアルカリ洗剤のpHが12なので、pOH1​=14−pH1​=14−12=2 したがって、初期の水酸化物イオン濃度は、

[OH−]1​=10−2 mol/L=0.01 mol/L

目標のpHから目標の水酸化物イオン濃度 [OH−]2​ を計算する

目標のpHを7とすると、pOH2​=14−pH2​=14−7=7 したがって、目標の水酸化物イオン濃度は、

[OH−]2​=10−7 mol/L=0.0000001 mol/L

希釈に必要な総体積 V2​ を計算する

希釈の前後で、溶けているアルカリ成分の物質量(モル数)は変わりません。

(初期濃度)×(初期体積)=(希釈後濃度)×(希釈後体積) [OH−]1​×V1​=[OH−]2​×V2​ ここで、

  • V1​ = 初期のアルカリ洗剤の体積 = 10 L
  • V2​ = 希釈後の総体積(求めるもの)

式を変形して V2​ を求めます。

V2​=[OH−]2​([OH−]1​×V1​)​V2​=10−7 mol/L(10−2 mol/L×10 L)​V2​=10−7 mol/L10−1 mol⋅L/L​V2​=10−1×107 LV2​=106 L=1,000,000 L

加える水の量 Vwater​ を計算する

加える水の量は、希釈後の総体積から初期のアルカリ洗剤の体積を引いたものです。

Vwater​=V2​−V1​Vwater​=1,000,000 L−10 LVwater​=999,990 L

となります。

補足としては

理論値:

この計算は、アルカリ成分が完全に電離し、理想的に希釈されるという仮定に基づいています。実際の洗剤には、pHを一定に保とうとする緩衝作用を持つ成分が含まれている場合があり、その場合はさらに多くの水が必要になるか、pHが計算通りに下がらないことがあります。

「pH7程度」の解釈:

厳密にpH7.00にするには無限の希釈が必要です。もし目標pHが例えばpH8であれば、必要な水の量は約99,990 Lとなり、pH9であれば約990 Lとなります。目標とするpHによって必要な水の量は大きく変動します。

あとは酸性の物質を加えてある程度中和させて多めの水で濯ぐというのも手だと思います。

なんせ、しっかり中性域にしたいと考える場合はリトマス試験紙を常に持ち歩く、自分が思っているよりも大量の水で濯ぐ癖をつける。というのが必要になるのではないでしょうか?

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