水害
水害と言っても色々な種類があると思います。
大雨、河川の氾濫などで住宅の床下が水浸しになってしまう。
集合住宅などで上階の排水の不具合などによる漏水、屋上に溜まった雪解け水が室内に垂れ流れてくる漏水、上階の水道管が凍結し水道管が破裂したことによる漏水。
住宅の床下の排水管が接続されておらず住宅の床下が汚水のプールになっていた。
などなど一口に「水害」といってもパターンは色々あるものと考えられます。
一般的な水害時の対応
一般的な水害時の対応は以下のようになることが多いのではないでしょうか?
・役所もしくは家を建ててくれた建築屋さんへ連絡
・床の解体もしくは床下に潜り汚泥をかき出す
・水で洗浄
・送風乾燥
・復旧
・建築屋さんもしくは管理会社などへ連絡
・建築屋さんか管理会社が設備業者さん、大工さんへ連絡
・天井解体もしくは上階の漏水部を止水
・乾燥
・復旧
・建築屋さんへ連絡
・建築屋さんから設備業者さんへ連絡
・排水
・排水管修理もしくは全部取り替え
・床下の汚泥を撤去(床を全て剥がす場合も多い)
・乾燥
・復旧
こんな流れで施工するのが一般的な作業フローであると思います。
洗浄と乾燥だけで後々カビが生えたりしないのか?
僕の経験ですが、漏水事故発生時に洗浄と乾燥だけで復旧した場合、ものすごい高確率で住宅はカビて来ます。
屋根の雨漏りで室内に水がポタポタ落ちてきた。屋根を修理し濡れた断熱材を交換して復旧。のような簡単な施工で終わらせると、半年~数年後にビックリするほどカビだらけになります。
乾燥だけではカビが発生する可能性が高い理由を解説します
- カビの生育条件: カビは、水分、栄養源(建材の木材、壁紙、ホコリなど)、適切な温度(一般的には20~30℃程度)、そして酸素があれば生育します。漏水事故は、これらの条件のうち最も重要な「水分」を大量に供給してしまうため、カビにとって絶好の繁殖環境を作り出します。
- 内部に残る水分: 表面が乾燥したように見えても、壁の内部、床下、天井裏などの見えない部分には水分が残っている可能性が高いです。特に木材や断熱材、石膏ボードなどの多孔質の材料は水分を吸収しやすく、時間をかけてゆっくりと放出するため、長期間にわたってカビの生育を促す可能性があります。
- カビの胞子の存在: 空気中には常にカビの胞子が浮遊しています。漏水によって水分を含んだ場所にこれらの胞子が到達すると、すぐに繁殖を開始します。乾燥だけではこれらの胞子を完全に除去することはできません。
- 栄養源の存在: 建材や室内のホコリなど、カビの栄養源となる有機物はいたるところに存在します。漏水によってこれらが湿ると、カビは容易に栄養を吸収して成長します。
- 温度と湿度の上昇: 漏水後の湿った状態は、室内の湿度を上昇させます。特に梅雨時期や夏場など、温度が高い時期にはカビが活発に繁殖しやすくなります。
乾燥処理だけを行った場合のリスク
- カビの再発: 目に見えない部分でカビが繁殖を続け、時間経過とともに再び表面に現れる可能性が高いです。
- 健康被害: カビはアレルギー症状(鼻炎、喘息、皮膚炎など)や呼吸器系の疾患を引き起こす可能性があります。特に小さなお子様や高齢者、アレルギー体質の方は影響を受けやすいです。
- 建材の劣化: カビは木材を腐らせたり、壁紙を剥がしたりするなど、建材を劣化させる原因となります。これにより、建物の寿命を縮める可能性があります。
- 悪臭の発生: カビは特有の不快な臭いを発生させることがあります。
漏水時はカビ対策の工程を行うことを推奨いたします
適切なカビ処理の重要性
漏水事故後のカビ対策は、単に乾燥させるだけでなく、以下のステップを含む適切な処理を行うことが重要です。
- 原因の特定と修理: まず、漏水の原因を特定し、根本的に修理する必要があります。これを行わない限り、再発のリスクは解消されません。
- 初期対応(迅速な乾燥と換気): 漏水が確認されたら、できるだけ早く水分を拭き取り、窓を開ける、換気扇を回す、除湿機や扇風機を使用するなどして、徹底的に換気と乾燥を行います。
- 専門業者によるカビ処理: 広範囲にわたる浸水や、目に見えない場所でのカビの発生が疑われる場合は、専門のカビ処理業者に依頼することを強く推奨します。専門業者は、適切な薬剤や機材を用いて、カビの除去、殺菌、再発防止の処理を行います。
専門業者にカビ対策を依頼すると以下のような施工をしてくれることが多いです。
1. 事前調査・診断
- 目視調査: 専門家が被害状況を目視で確認し、カビの発生箇所や範囲、建材の損傷などを詳しく調べます。
- 湿度測定: 専用の機器を用いて、壁内部や床下などの湿度を測定し、水分が残っている場所を特定します。
- カビ検査 (オプション): 必要に応じて、空気中のカビの胞子を採取してカビの種類を特定、菌数を測定することで、より適切な対策を立てることが可能になります。
- 原因調査: 漏水の原因や湿気の発生源を特定し、根本的な解決策を提案します。
2. 封じ込め・隔離
- 汚染区域の隔離: カビの胞子が他の部屋に拡散するのを防ぐため、ビニールシートなどで作業エリアを密閉します。
- 負圧管理: 作業エリア内を外部より気圧の低い状態(負圧)に保ち、カビの胞子が外部へ漏れ出すのを防ぎます。高性能な空気清浄機(HEPAフィルター付き)を使用することが一般的です。
3. カビの除去・清掃
- 物理的な除去: カビが生えている壁紙、石膏ボード、木材などの建材を、状況に応じて剥がしたり、削り取ったりして物理的に除去します。
- 特殊な洗剤や薬剤の使用: カビの種類や素材に合わせて、専用のカビ取り剤や殺菌剤を使用してカビを徹底的に除去・消毒します。
- ブラッシングや拭き取り: 表面に付着したカビを丁寧にブラシでこすり落としたり、専用の洗剤で拭き取ったりします。
- 高圧洗浄 (場合による): 広範囲にカビが発生している場合などには、高圧洗浄機を使用してカビを洗い流すことがあります。
4. 汚染物質の除去
- HEPAフィルター付き掃除機での清掃: 細かいカビの胞子や粉塵を、一般的な掃除機よりも微細な粒子まで捕集できるHEPAフィルター付きの掃除機で徹底的に清掃します。
- エアリング: 除菌装置などを使用して、空気中に浮遊しているカビの胞子や臭いを除去します。
5. 乾燥処理
- 送風機の設置: 強力な送風機を使用して、壁内部や床下などの湿気を効率的に乾燥させます。
- 除湿機の設置: 除湿機を使用して、室内の湿度を下げ、カビの再発を防ぎます。
- 含水率の測定: 乾燥度合いを測定器で確認し、適切な含水率になるまで乾燥作業を行います。
6. 防カビ処理
- 防カビ剤の塗布: カビの再発を抑制するために、建材の表面に防カビ剤を塗布することがあります。
- 換気対策の提案: 今後のカビ発生を防ぐための換気方法や湿度管理についてアドバイスを行います。
まとめ
僕は清掃や消臭関係のセミナーなどあちこちで講師を務めさせていただいていることもあり、日本全国あちこちに同業者さんや近い業種(特殊清掃業者さん、消臭屋さん、カビ処理業者さん)などの知り合いが多いのですが、多くの業者さんが「漏水後はカビ処理を行わなければ高確率でカビが生える」と言っています。
建築業者さんなどは「乾燥させれば大丈夫。新品に交換すれば大丈夫。」と簡単に言いますが、そうでもないケースが殆どです。
漏水事故時は「ちょっと大袈裟かも?」と思うくらいしっかり処理を行うことで、大切な資産である住宅の価値を守れると思います。
僕も加盟している「一般社団法人日本除菌脱臭サービス協会」でも「Re-ESTA」という事故災害復旧サービスを推奨しています。協会独自の工法の組み合わせでより精度の高い処理を目指しているサービスで、現在も内容は進化中との事です。
水害後数年経過し「あの時しっかり対応していれば」と後悔する人が少しでも減ると良いな。と考えています。
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