お掃除を考える(入門編)

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次の現場まで時間があるのでもう一つ記事を書いてみます。

「お掃除入門」これ難しいですね。どこを入門の門にするのか?

タオルとバケツを買いましょう。

掃除機で除塵。掃除機のかけ方。タオルの使い方。モップの使い方。洗剤の噴霧のしかた。どれもこれも正解と言われる考え方も施工方法もあります。スプレーヤーで洗剤を噴霧するときは云々。タオルで拭くときの圧力は何キロ。みたいなのとか。まーそんなの知らなくてもお掃除は出来ちゃいます。なのでちょっとプロっぽい所を入門の門しようと思います。

お掃除、洗浄にはいくつかの分類があります。僕たちお掃除屋さんは日常的には以下の3種類の洗浄を使い分けて日々汚れと戦っているものだと推測されます。

・分離型洗浄 ・溶解型洗浄 ・分解型洗浄 の3パターンに分類されることが多いです。

分離型は界面活性剤やアルカリの作用で汚れを塊の状態で引きはがす。

溶解型は分子の結晶をバラバラにして溶解する。有機溶剤、酸や弱アルカリを使うことが多い。

分解型は分子を壊して汚れではないものに変える洗浄。強アルカリや酸化剤を使うことが多い。

洗浄と言うと難しく感じますが、平たく言えば建具に洗剤をスプレーしてタオルで拭き取るのも洗浄といって問題ないと思います。洗剤などで落ちやすくなった汚れをどれくらい回収するか?回収率がお掃除ではとっても大切です。

ヤニ部屋で「洗剤で拭いたのに乾拭きもまだ茶色くなる」とか「キレイに拭いたのにまだタバコ臭い」なんて場合は回収が出来ていないことが原因である可能性が高いです。

例えばですが、ポリッシャーなどで洗浄、汚水回収。洗浄後、回収、濯ぎ、回収という工程で施工したとします。

一般的なウェットバキュームでも30%程度汚れを回収できれば上出来。なんてデータもあります。カッパギで汚水をあつめてチリトリで回収なんて施工だとほぼ汚れは回収されません。(水分は取れるかもしれないけど)

(汚れ100とすると30%回収→70%残留。70%の30%回収で21%残留)100%には届きません。目に見えない汚れが残っています。これが「かなり臭いが薄くなったけど何処かから臭いがする」というケースの原因の場合もありますし、汚水はキレイに吸えたけど洗剤によって浮きがった汚れが対象個所に残留している現象になります。乾拭きが茶色くなるとか、最後のワックス塗布のモップが真っ黒になるとか。Beクリーンではワックス塗布のモップが黒くなるのは「あってはならない」という決まりになっています。汚れが落ちてないからワックスモップが黒くなる。

洗剤を10ℓ塗布して、その洗剤を10ℓ回収すれば完璧か?というとそうもならず、洗剤によって溶けた(浮いた)汚れも合わせて100%近くまで回収する必要があります。撒いた洗剤+溶けた(浮いた)汚れ、この合計を100として考えなければいけません。僕もそうでしたが、撒いた洗剤や水の量を100として考えるけど、溶けたり浮いた汚れのことを考えていなかった。という勘違いをしやすいので注意が必要です。

濯ぎの際も1㎡を50ccの水で濯ぐのと150ccの水で濯ぐのでは汚れなどの残留量が変わります。

床やお風呂、なんでもそうですがお掃除の際に丁寧なお掃除屋さんは「中和」とか「リンス」「濯ぎ」という工程を入れると思います。

ここも注意が必要で強アルカリを使ったお風呂なんかを水で濯いでリンス。とか酸性でリンス。って意外と難しいです。

結構勘違いしている人が多いので解説ですがpHを上げたり下げたりするのって、単純に倍々みたいな計算ではないんですね。例えばpH14の薬品10ccがあったとして、それをpH13にするには10cc水を足すとか20cc水を足す。とかそういう計算にはなりません。

pHは対数計算なので

  • pHが1上がる場合: pHが1上がると、-log₁₀[H⁺] の値が1大きくなります。これは、log₁₀[H⁺] の値が1小さくなることを意味します。 log₁₀[H⁺] が1小さくなるということは、水素イオン濃度 [H⁺] が 1/10 になるということです。
  • pHが1下がる場合: pHが1下がると、-log₁₀[H⁺] の値が1小さくなります。これは、log₁₀[H⁺] の値が1大きくなることを意味します。 log₁₀[H⁺] が1大きくなるということは、水素イオン濃度 [H⁺] が 10倍 になるということです。

例:

  • pH 3 の溶液の水素イオン濃度は 10⁻³ mol/L です。
  • pH 4 の溶液の水素イオン濃度は 10⁻⁴ mol/L です。(pHが1上がると、濃度は1/10になります)
  • pH 2 の溶液の水素イオン濃度は 10⁻² mol/L です。(pHが1下がると、濃度は10倍になります)

このように、pHが1変化するごとに、水素イオン濃度は10倍または1/10倍に変化します。単純な倍々(2倍や1/2倍)の関係ではありません

具合的にpHを変化させるには

前提:

  • 温度は25℃とします。この温度では、pH + pOH = 14 が成り立ちます。
  • pH 14 の溶液は、水酸化物イオン濃度が 1 mol/L であると近似できます(実際には活動度を考慮する必要がありますが、ここでは簡略化します)。
  • pH 13 の溶液は、水酸化物イオン濃度が 10⁻¹ mol/L = 0.1 mol/L です。
  • pH 12 の溶液は、水酸化物イオン濃度が 10⁻² mol/L = 0.01 mol/L です。

pH 14 から pH 13 にする場合:

  1. 初期状態: pH 14 の溶液の体積を V₁ とします。水酸化物イオンのモル数は 1 mol/L × V₁ = V₁ モルです。
  2. 目標状態: pH 13 の溶液の体積を V₂ とします。水酸化物イオン濃度は 0.1 mol/L です。水酸化物イオンのモル数は 0.1 mol/L × V₂ モルです。
  3. モル数は変化しない: 希釈によって水酸化物イオンのモル数は変わらないため、V₁ = 0.1 × V₂ となります。
  4. 必要な体積: これより、V₂ = 10 × V₁ となります。つまり、pH 14 の溶液の体積を 10倍にする必要があります。
  5. 加える水の量: 加える水の量は V₂ – V₁ = 10 × V₁ – V₁ = 9 × V₁ となります。

結論 (pH 14 → pH 13): pH 14 の溶液に対して、9倍の量の水を加えることで、pH を 13 にすることができます。例えば、pH 14 の溶液が 100 mL あれば、900 mL の水を加えて合計 1000 mL にすることで pH が 13 になります。

pH 13 から pH 12 にする場合:

  1. 初期状態: pH 13 の溶液の体積を V₂ (これは先ほどの計算で 10 × V₁) とします。水酸化物イオンのモル数は 0.1 mol/L × V₂ モルです。
  2. 目標状態: pH 12 の溶液の体積を V₃ とします。水酸化物イオン濃度は 0.01 mol/L です。水酸化物イオンのモル数は 0.01 mol/L × V₃ モルです。
  3. モル数は変化しない: 希釈によって水酸化物イオンのモル数は変わらないため、0.1 × V₂ = 0.01 × V₃ となります。
  4. 必要な体積: これより、V₃ = 10 × V₂ となります。つまり、pH 13 の溶液の体積を 10倍にする必要があります。
  5. 加える水の量: 加える水の量は V₃ – V₂ = 10 × V₂ – V₂ = 9 × V₂ となります。

結論 (pH 13 → pH 12): pH 13 の溶液に対して、9倍の量の水を加えることで、pH を 12 にすることができます。例えば、pH 13 の溶液が 100 mL あれば、900 mL の水を加えて合計 1000 mL にすることで pH が 12 になります。

まとめ:

  • pH 14 を pH 13 にするには: 現在の溶液の 9倍の量の水 を加えます。
  • pH 13 を pH 12 にするには: pH 13 の溶液に対して、その溶液の 9倍の量の水 を加えます。

注意点として、この例えはあくまで理想的な強塩基溶液での計算であり、実際の溶液ではわずかな誤差が生じる可能性があります。また、水の量で考える場合は、元の溶液の体積を基準に考える必要があります

なのでお掃除使う油汚れ洗剤みたいなpH14に近い洗剤をリンスして中性にしたい。とおもうと使った洗剤の約1000万倍の水をかけて濯がなければ中性になってなりません。そんな水量で濯ぐなんてほぼ不可能ですよね

pH1の強酸性を中性にする場合も同様に100万倍の水が必要という計算になります。

ですので上述した「回収率」と同じく「濯ぎ」についてもよく考えないと理想的な状態に対象物表面のpHを維持するのは難しいという事になります。

単純に「アルカリ性を中和させるなら酸性洗剤で中和させればいいじゃん」となりがちですが、これも実は難しくてアルカリを酸で中和させると「塩」が生成されます。

中和反応の一般的な式:

酸 + 塩基(アルカリ) → 塩 + 水

例:

  • 塩酸 (HCl) と水酸化ナトリウム (NaOH) の中和: HCl (酸) + NaOH (塩基) → NaCl (塩化ナトリウム – 塩) + H₂O (水)
  • 硫酸 (H₂SO₄) と水酸化カリウム (KOH) の中和: H₂SO₄ (酸) + 2KOH (塩基) → K₂SO₄ (硫酸カリウム – 塩) + 2H₂O (水)

塩とは:

塩は、酸の陰イオン(例えば、Cl⁻、SO₄²⁻)と塩基の陽イオン(例えば、Na⁺、K⁺)が結合した化合物です。中和反応では、酸から放出される水素イオン (H⁺) と、塩基から放出される水酸化物イオン (OH⁻) が結合して水 (H₂O) を生成し、残ったイオン同士が結合して塩を形成します。

例外:

場合によっては、中和反応で塩と水以外にも生成物が生じることがあります。例えば、炭酸塩や炭酸水素塩のような塩基を酸で中和すると、塩、水に加えて二酸化炭素 (CO₂) などの気体が発生します。

  • 塩酸 (HCl) と炭酸ナトリウム (Na₂CO₃) の中和: 2HCl (酸) + Na₂CO₃ (塩基) → 2NaCl (塩) + H₂O (水) + CO₂ (二酸化炭素)

なかなか難しいですが、単純に水で濯ぐとか逆のpHで中和とはならないよ。というのだけ意識しておけばいいとは思います。

トイレやお風呂の汚れは大まかに以下のように分類されます

・無機系汚れ

金属石鹸(石鹸カス)石鹸の脂肪分、皮脂分などが水道水のミネラル分と結合。アルカリ洗剤もしくは酸性洗剤で除去可能。

カルシウムスケール(エフロも含む、白っぽいガチガチ、尿石も)

水道水などのカルシウム分が不純物と結合酸性洗剤で除去。有機汚れと(カビやヌメリ)と一緒になってることが多いので、カビ取り剤などを最初に使ってしまうと有機分が除去され酸で落としにくくなる場合もある。

シリカスケール

水道水中のケイ素(Si)が不純物と結合

水廻りの建材もシリカ(Siを構成元素に含む物質)が含まれる場合が多く、汚れと建材のシリカが同化し落としにくくなる場合が多い。酸性フッカアンモニウム配合の洗剤が効果的。中性フッカアンモやフッ化水素はお勧めしません。(中性はpH不足、フッ化水素は危険すぎる。)

・有機系汚れ

カビ

カビはカビですね

油分

皮脂、石鹸の油脂分、キッチンなどの油分が流れ込むなど

埃など

有機系の汚れがあると無機系の汚れが付着するケースが多い

が挙げられます。

お掃除にこだわってくると「スルファミン酸が」「塩酸が」とか酸の種類が豊富になってきます。

あくまでも僕の主観ですけど酸の種類によってこんなイメージで使い分けると便利じゃないかな?ってのを書いてみます。

酸の種類シリカカルシウム金属石鹸
リン酸432
スルファミン酸522
クエン酸532
蓚酸552
硝酸512
フッ化アンモニウム154
塩酸515

1がとっても効く。5があんまり効かない。

こんな感じで分けてみました。酸性洗剤を購入する際の参考になれば幸いです。

ただ、この表が絶対か?というとそうでもなくて、洗剤の温度や使用方法でも5が1になることもありますし、超ざっくりな参考程度という事で。

今日はまとまりがないまま終了です。ちょっと次の現場の時間が迫ってきました(汗)

お風呂の汚れの分類の後、床の汚れとかキッチンの汚れとかに進みたかったんですが。

それにしてもこの記事のポイントとしては「回収率」「中和」「洗浄方法」これに尽きると思います。拭いたのに後から白く浮いてくる。水拭きした床がムラムラになる。消臭目的だと清掃してキレイなのに臭い。などなど、清掃後に出てくる不具合の大半が今日の記事の内容が原因になっているのかな?とは思います。

僕はお掃除は単なる業務とは考えていなくて、ある意味武道「剣道」「柔道」みたいな「道」かな?って思っています。「お掃除道」みたいな(笑)もしくは学問?机上の理論とフィールドワークが融合した学問みたいな。

道を極めようと思うと技術は勿論ですが理論的な部分や精神的な部分も必要になるのだと思います。

もしお掃除のウンチクに興味のあるお掃除屋さんがいれば是非これからもBeクリーンのウンチクを読んでもらえれば嬉しいです。

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