ニオイについて考える

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「消臭を業務として始めたい」という相談を受けることがとても多いです。これと同じくらい「現在消臭業務をやっているけどニオイが消せない」なんて相談を受けることも多いです。

昔はあれこれ無料で相談に乗っていたんですが、無料だと本気度が低い人の相談も増えてきて僕の時間が随分無駄になったので今は完全有料でご相談を受けています。簡単なご相談なら、専門的な強談なら。みたいに分けてあります。

こちらのネットショップのなかで料金体制はある程度記載してあります。リピーターさんも多く人気のメニューです。

基礎的なことは有料ですが、今日は概論的な記事を書いてみようと思います。

「ニオイ」とは、空気中に漂う特定の化学物質が、私たちの鼻にある嗅覚細胞を刺激することで感じる感覚のことです。

ニオイのメカニズム:

  1. ニオイ物質の発生: 物体から微量の化学物質が空気中に放出されます。これがニオイの元となる「ニオイ物質」です。ニオイ物質は、揮発性(蒸発しやすい性質)を持つことが多いです。
  2. 鼻への到達: 空気中のニオイ物質は、私たちが呼吸をすることで鼻の奥にある「嗅上皮(きゅうじょうひ)」という場所に到達します。
  3. 嗅覚細胞の刺激: 嗅上皮には、様々な種類の「嗅覚受容体(きゅうかくじゅようたい)」を持つ嗅覚細胞が存在します。それぞれの嗅覚受容体は、特定の構造を持つニオイ物質と結合します。
  4. 電気信号への変換: ニオイ物質が嗅覚受容体と結合すると、嗅覚細胞は電気信号を発します。
  5. 脳への伝達と認識: この電気信号は、嗅神経を通じて脳の嗅球(きゅうきゅう)という場所に送られ、さらに大脳皮質の嗅覚野(きゅうかくや)などで処理されます。脳はこの信号を解析し、「これは花のニオイだ」「これは焦げたニオイだ」といったように、何のニオイであるかを認識します。

ニオイの特徴:

  • 多様性: 世の中には、数多くの異なるニオイが存在します。人間の鼻は、数千から数万種類ものニオイを識別できると言われています。
  • 主観性: ニオイの感じ方は、人によって異なる場合があります。同じニオイでも、ある人は良い香りと感じ、別の人は不快に感じることもあります。これは、個人の経験や記憶、体調などによって影響を受けるためです。
  • 感情との結びつき: ニオイは、私たちの感情や記憶と強く結びついています。特定のニオイを嗅ぐと、過去の出来事や感情が鮮やかに思い出されることがあります(プルースト効果)。
  • 危険の察知: 腐敗臭やガス漏れのニオイなど、危険を知らせる役割も持っています。
  • 食欲への影響: 食べ物のニオイは、食欲を刺激したり、味を感じる上で重要な役割を果たします。

消臭作業を行う上で絶対に知っておかなければいけないニオイの特性として下記のものがあります:

*両親媒性がある:親水性、親油性
*揮発性がある:分子が気中に放出
*官能基を持つ:アルデヒド基、カルボキシル基、等々

ここを理解しておかなければ消臭作業をはじめても数年以内に壁にぶつかると予想されます。(実際に僕もそうでした。やってもやっても消えないニオイにぶつかりますし、なんとなくうっすら臭いがする気がする、、、という現実に直面します」

現在の日本で広く使用されているニオイの評価方法は「6段階臭気強度表示法」だと思います。これは0~5までの尺度でニオイを評価するものです。実際には0.5間隔で尺度を表示する。なので実際には11段階になります。

臭気強度判定の目安
0無臭
1やっと感知できるにおい(検知閾値)
2何のにおいであるかわかる弱いにおい(認知閾値)
3楽に感知できるにおい
4強いにおい
5強烈なにおい

注意が必要なのは、みなさん簡単に「この部屋は臭気強度 5 だね」とか「完全無臭で 0 だね」とジャッジしがちです。僕は国家資格者の臭気判定士と何度も同行して臭気調査を行っていますが、僕たちが日常的に生活する中で臭気強度「5」なんてそうそう出会わないと思います。

孤独死現場で腐敗が進んで凄惨な現場でも「4」が限度ではないでしょうか?「5」というのは大規模水害などで海岸沿い、街中にご遺体があり腐敗が進んでいるなど特殊な条件、ものすごく強烈な臭気物質を直接嗅ぐなど、特殊なケースの場合で初めて出てくる数字ではないかと思います。

また同様に「0」という数字もほぼほぼ出会えない数値ではないでしょうか?よく皆さん外の空気(外気)を無臭の基準にしますが、外気ですら無臭であることはほぼあり得ません。何らかのにおいはしているが個人差にもよりますが感知できていないだけであると思います。

ですので、一般的に使用される数値は 0.5~4(もしくは4.5)が妥当ではないでしょうか?

他にもニオイの評価方法はいくつかあり代表的な例で言いますと

ガスクロマトグラフ分析や、三点比較式臭袋法、セントメータ法、無臭室法、オルファクトメーター法、注射器法、9段階快・不快度表示法など色々あります。

国家資格者である臭気判定士でなければ行てはいけない判定方法もありますので注意が必要です。

消臭脱臭方法はいくつかに分類されます。代表的な工法は以下のようなものがあります。

僕たち消臭業者はこれらの工法と各種消臭剤、消臭の前段階の洗浄や前処理を組み合わせて消臭脱臭を進めていくことになります。

世間一般ではトイレのニオイは「アンモニア臭」と言われることが多いですが、アンモニアのニオイを嗅いだことがある人なら分かると思いますが「トイレのニオイとはなんか違うよね、、、」みたいな印象を持たれるのでは?と思います。

消臭業界ではトイレのニオイは「フェニル酢酸」が主成分であると言われています。衣類などの染み付いた尿臭などは「p-クレゾール」という成分と言われています。

他にも腐敗臭であれば微生物が原因で生成されるアンモニア、硫化水素、メルカプタン、インドール、トリメチルアミン、酪酸などが原因と言われています。

難しいのが同じ化学式でも構造によりニオイの強さや質が変わる(同じ二重結合でもシス体とトランス体では違うニオイになる)とか、臭いの成分に3つの分子が含まれており(仮にA,B,Cとする)Aが70%Bが20%Cが10%だとしてもAの分子が一番臭うとは限らない。など変則的な概念が出てくる点が消臭の難しさではないでしょうか?しかし専門的な知識は作業を重ねるうちに身についてくると思います。

具体例を挙げると

同じ化学式C10H16O2のジャスミンシス体ではジャスミンの香りトランス体では脂肪臭となります。

他に代表的なのがエチルです。酸部に付着する炭素の長さでニオイが違います。
酢酸エチル(CH3COOC2H5は果実臭とか芳香臭、
酪酸エチル(C3H7COOC2H5はバナナみたいなフルーティー臭い


ある程度ニオイの分類が出来ると「この物質にはこの薬品を使用するのが
効率的だろう」という予測が出来ます。あてっずっぽうに「おそらくこの
臭気には脱臭応援隊の水色だろう」というような消臭剤の選定をすると結果が出るまで
トライ&エラーを繰り返す時間が無駄にかかります。

賃貸物件で臭気問題で出やすい物質の例ですと

樹脂臭であればアセトフェノン

発泡スチロールならスチレン

カーペットの臭いは2-エチルヘキサノール

カルキ臭は2,6ジクロロフェノール

タバコならアルキルピリジン類

木材なら3-カレンなど。

などが挙げられます。

消臭脱臭を行う際にオゾンガスを使用することが日本では一般的です。ヒドロキシルラジカルを使用する場合もありますが強烈なニオイには使いにくい。日本の電圧(100V)では外国製機械の本来のスペックが発揮されず効果が出にくいなどちょっと改善点があったりします。

分子量を考えるとオンガスをどのように動かすか、自分が消そうとする臭いは上と下どちらに存在するのか?などイメージしやすくなります。

オゾンの分子量は48、臭い物質で最も分子量が小さいアンモニアの分子量は17,最も大きいムスクキシレンは297、空気の平均分子量は29である。分子量が大きなものは下方に小さいものは上方に存在しやすい。物質の分子量を空気の分子量で割ると比重が分かるのでアンモニアの比重は0.597程度となり比重が1より軽い為上方に存在する。オゾンの比重は1.6程度であるからアンモニアに反応させるにはオゾンを上方に行き届かせなければいけません。

分子量の計算方法は「ネットで調べる」ってのが一番早いですが自分で計算も可能です。

1. 化学式を確認する:

まず、計算したい物質の化学式を確認します。化学式は、その物質を構成する元素の種類と、それぞれの原子の数を表しています。

例:水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、グルコース(C₆H₁₂O₆)

2. 各元素の原子量を確認する:

次に、化学式に含まれる各元素の原子量を確認します。原子量は、周期表で調べることができます。一般的な原子量の値は以下の通りです(小数点以下は概数です)。

  • 水素 (H): 約 1.0
  • 炭素 (C): 約 12.0
  • 窒素 (N): 約 14.0
  • 酸素 (O): 約 16.0
  • ナトリウム (Na): 約 23.0
  • 塩素 (Cl): 約 35.5

3. 各元素の原子の数を数える:

化学式を見て、それぞれの元素の原子がいくつ含まれているか数えます。原子記号の右下にある数字が原子の数を表しています。数字がない場合は、1つと数えます。

例:

  • 水 (H₂O): 水素原子が2つ、酸素原子が1つ
  • 二酸化炭素 (CO₂): 炭素原子が1つ、酸素原子が2つ
  • グルコース (C₆H₁₂O₆): 炭素原子が6つ、水素原子が12個、酸素原子が6つ

4. 各元素の原子の数と原子量を掛け合わせる:

それぞれの元素について、「原子の数 × 原子量」を計算します。

例:

  • 水 (H₂O):
    • 水素 (H): 2個 × 1.0 = 2.0
    • 酸素 (O): 1個 × 16.0 = 16.0
  • 二酸化炭素 (CO₂):
    • 炭素 (C): 1個 × 12.0 = 12.0
    • 酸素 (O): 2個 × 16.0 = 32.0
  • グルコース (C₆H₁₂O₆):
    • 炭素 (C): 6個 × 12.0 = 72.0
    • 水素 (H): 12個 × 1.0 = 12.0
    • 酸素 (O): 6個 × 16.0 = 96.0

5. 全ての計算結果を足し合わせる:

最後に、ステップ4で計算した全ての値を足し合わせます。これがその物質の分子量となります。

例:

  • 水 (H₂O): 2.0 + 16.0 = 18.0
  • 二酸化炭素 (CO₂): 12.0 + 32.0 = 44.0
  • グルコース (C₆H₁₂O₆): 72.0 + 12.0 + 96.0 = 180.0

分子量の単位:

分子量の単位は、通常「原子質量単位 (amu または u)」または「ダルトン (Da)」が用いられます。化学反応の計算などでは、「グラム/モル (g/mol)」が用いられることもあります。

例題:

エタノール (C₂H₅OH) の分子量を計算してみましょう。

  1. 化学式: C₂H₅OH
  2. 原子量: C: 12.0, H: 1.0, O: 16.0
  3. 原子の数: 炭素: 2個、水素: 6個 (5個 + 1個)、酸素: 1個
  4. 掛け合わせ:
    • 炭素 (C): 2個 × 12.0 = 24.0
    • 水素 (H): 6個 × 1.0 = 6.0
    • 酸素 (O): 1個 × 16.0 = 16.0
  5. 足し合わせ: 24.0 + 6.0 + 16.0 = 46.0

したがって、エタノールの分子量は 46.0 amu (または u、Da、g/mol) です。

周期表を見ながら、ぜひ他の物質の分子量も計算してみてください。

こんな感じです。

今日は消臭脱臭を業務として行う場合の基本、概論的な部分のほんの一部の解説の記事でした。

もっと本気で取り組むならこの記事の200倍くらいのボリュームになるとは思いますが、僕もそこまで詳しいわけでは無いので自分が知っている部分のみで終わってしまいました(汗)

消臭脱臭からさらに専門性が高まり臭気調査などの業務も行うようになると、もっともっと学ぶべき分野は増えていきます。僕は国家資格である臭気判定士は未だ受かっていませんが(涙)いちおう受験勉強は続けていますので知識だけは少しあります。臭気判定士国家資格保有者であれば当たり前の内容の今日の記事です。

ただ、なんだかややこしく書きましたがこんなことを全く知らないで消臭作業を施工している業者さんの方が多いと思います。むしろほとんどの業者さんが専門知識はほどほどで施工しているのではないでしょうか?

逆を言えば「知らなくても出来る」分野ではあります。キレイにお掃除して消臭剤を撒いてオゾンのスイッチを入れる。これだけで現場を終わらせる業者さんが多いという事です。

ちょっとの勉強で差別化が可能という事にもなるかと思います。

僕は消臭とお掃除はものすごく近しい分野だと感じています。完璧にお掃除が出来るならニオイが消える可能性は高いですし、完璧に消臭が出来るなら一切お掃除をしなくてもニオイが消える可能性は高いです。

消臭もお掃除も高い次元で施工できるならさらにニオイが消える可能性は高くなります。

そんな魅力的な消臭のお話でした。

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